日本との労働慣行の違いは”グワンシ”による!橘玲「中国私論」

今回は、橘玲氏が中国社会の評論を行った「中国私論」から、日本と中国の労働慣行の違いについてまとめました。

日本と中国の労働慣行の違いには、”グワンシ”という中国独自の人間関係がありました。

スポンサーリンク

◆中国は”グワンシ”の社会

橘氏はまず、中国人には人間関係の基本に「グワンシ」というルールがあるといいます。

中国は「関係(グワンシ)の社会」だといわれる。グワンシは幇を結んだ相手との密接な人間関係のことで、これが中国人の生き方を強く規定している。(出典:Part1中国人という体験「幇とグワンシ」 以下同)

恥ずかしながら私はこの”グワンシ”を知りませんでした。

分かり易い具体的な例として、サッカー元日本代表の岡田武史監督が中国のクラブの監督に就いた際の話が書かれていました。中国では「グワンシ」をもっている人が優先的に試合に出られるので、皆真剣に練習をしなかった、だから岡田監督はグワンシ<実力でスタメンを選ぶように変えるように尽力したというエピソードです。

社会の隅々まで浸透している価値観だと知りました。

◆日本⇒組織、中国⇒グワンシ

そして橘氏は、会社に依存して生きる日本人が多い理由を次のように挙げます。

日本の場合、安心は組織(共同体)によって提供されるから、村八分にされると生きていけない。日本人の社会資本は会社に依存しており、不祥事などで会社をクビになれば誰も相手にしてくれなくなる。だからこそ、会社(組織)のルールを私的な関係より優先しなくてはならない。

「単身赴任」なんかがこの典型的な例ですね。

それに対して、中国ではグワンシが社会資本のすべてであると述べています。

それに対して中国では、安心は自己人の「グワンシ」によってもたらされる。このような社会では、たとえ会社をクビになったとしても「グワンシ」から新しい仕事が紹介されるから困ることはない。だが自己人(朋友)の依頼を断れば、「グワンシ」は切れてすべての社会資本を失い、生きていくことができなくなってしまうのだ。

なるほど両国の労働に対する考えの違いがよく分かります。

◆転職のエピソード

さらに橘氏は、この両国の違いが顕著に現れたエピソードとして、中国での転職の話を提示します。

私が面白いと思ったのは、中国人幹部から突然、「社長、喜んでください。同業他社が2倍の給料を出してくれます。辞職させていただきます」といわれたという話だ(これは珍しいことではないようだ)。

こんなときふつうの日本企業なら、「ここまで育ててやったのに」と不快に思うだろう(「裏切者」と怒鳴りつけてもおかしくない)。だがこの会社の社長はまったく逆に、「おめでとう」といっしょに喜ぶのだという。

社長がいうには、社員の転職を祝福すれば、会社を離れてからも「グワンシ」は続く。ライバル会社が高給で引き抜くような社員は優秀だから、やがてそこでも頭角を現わし、大きな権限を持つようになるだろう。そうなれば、彼との「グワンシ」から新しいビジネスの可能性が生まれるのだ。

う~ん。この価値観は驚きました。最初はビックリしたけれど、よく考えるとこういう考え方の方が日本よりカラっとしている分、お互いにとって健康的な気がします。

◆会社は単なる通過点

また、橘氏は中国人が転職に対して寛容な理由について、次のように解説しています。

中国人は、会社をたんなる通過点と考える。だから企業経営者は自分を学校の校長だと考え、優秀な”生徒”を卒業させていく。こんな話を聞くと、社員をひたすら会社に囲い込もうとする日本型雇用より、オープンな労働市場のなかで関係(ネットワーク)を広げていこうとする中国式のやり方のほうが合理的なようにも思えてくる。

そして、中国では労働に対する価値観が近い欧米企業の方が日本企業より評価が高いといいます。

中国では、欧米の企業が日本企業より圧倒的に評価が高い。(中略)中国人社員は組織(会社)ではなく個人単位でものごとを考えるから、競争や信賞必罰に抵抗がない。考え方が論理的で納得できないことには従わないから、上司はすべてを理詰めで説明しなければならない(精神論は通用しない)こうした傾向は欧米人にも共通するから、グローバルスタンダードの成果主義の方が中国人は自分が成果主義の方が中国人は自分が正当に扱われていると感じる。

◆橘玲「中国私論」

テレビなどでは中国に対し、安全面や信頼性が担保されていない点や(パクリ商品などの)著作権ルールなどの国際的なルールを守っていない、と途上国扱いして、見下して安心してカタルシスを得る、みたいな報道がよくありますが、こと労働慣行についていえば、(”グワンシ”という特別な関係によるものではあるものの)日本の方がよっぽど途上国なのかもしれないな、とこの本を読んで私は感じました。

この本では上記のような労働以外にも、交流した現地の中国人、歴史、社会システムなどについて橘氏独自の解釈を加え、中国社会を論じています。

ご興味のある方は、こちらから。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする