中島美鈴『悩み・不安・怒りを小さくするレッスン「認知行動療法」入門』から、悪い考え方のクセを修正する6つの方法

認知行動療法について分かりやすく学ぶことができる、臨床心理士・中島美鈴著『悩み・不安・怒りを小さくするレッスン「認知行動療法」入門』。

今回はそのなかでも、考え方の悪いクセ(推論の誤り)を修正する方法について取り上げます。

中島氏は、以下の修正法について、基本的には認知行動療法で一般的に用いられているもので、心理療法家・デヴィッド・D・バーンズの考えを参考に著者がアレンジを加えたものとして、次の6つの方法を挙げています。

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1.一滴のインク技法(「一般化のしすぎ」の修正法)

「一般化のしすぎ」とは、1つか2つの失敗や嫌な出来事だけを根拠に「いつも~だ」「すべて~ない」のように万事式に考えてしまう、推論の誤りのことです。

たとえば、上司から一つのミスを指摘されただけなのに、仕事の能力や人格まで否定されたかのように考えている自分に気づいたら、まず、「違う、違う、それは『一般化のしすぎ』だ。否定されたのは、書類の一部じゃないか」と自分に言い聞かせてください。今、問題を指摘されたのは、、仕事の能力全体ではないし、ましてや自分という人間そのものでもありません。

そのことに気づいたら、指摘された部分については真摯に受け止め、それをどう改善すれば良いか考えることに集中しましょう。

「一般化のしすぎ」という考え方のクセをお持ちの方は、ともすると、否定された部分にきちんと向き合おうとせず、「否定された」「傷つけられた」という抽象的な事実とだけ向かい合っているために、かえって気分の落ち込みを大きくしている場合が少なくありません。否定された部分についてはしっかりと受け止めることが、事実以上に落ち込むのを防ぎ、思考を問題解決に向かわせやすくします。

2.理由分析グラフ(「自分への関連づけ」の修正法)

「自分への関連づけ」とは、良くないことが起こったとき、自分の関係ないことまで自分に原因があるかのように考えてしまう、推論の誤りのことです。

たとえば、朝、職場の先輩に挨拶したときにそっけない反応をお返されたのは、先輩が仕事のことでナーバスになっていたからかもしれません。そうした「仕事に関する理由」を仮に30%としておきましょう。(中略)私生活に関する理由も10%くらいはあるかもしれません。(中略)「体調に関する理由」も10%は見ておきたいところです。もちろん、先輩に対して自分が何かしたから、という理由も現状では否定できません。それを仮に25%としておきましょう。

ここで大切なのは、分析の正確さではありません。「自分に関する理由」が100%を占める円グラフを描いていた自分のおかしさに気づき、他の理由にも目を向けてみようとすることです。その結果、「私のせいだけじゃないかも」と思うことができれば、それだけでも気分が少し楽になり、問題解決に向けて一歩を踏み出しやすくなります。

3.証拠集め技法(「根拠がない推論」の修正法)

「根拠がない推論」とは、はっきりとした根拠がないまま結論を急ぎ、否定的にあれこれ考えてしまう、推論の誤りのことです。

たとえば、朝、先輩に挨拶したときに、そっけない藩王をされた理由が本当に自分にあるのかを検証するには、先輩が他の人と挨拶するときの態度を観察してみると良いでしょう。また、自分が積極的に動いて証拠を集める、というのも一つの方法です。たとえば、会社のエレベータで一緒になったときなどに、「先輩、すみません。今朝、挨拶したとき、何となく表情が硬いように感じてしまったんですあ、私の気のせいでしたか?」などと直接聞いてみるのはどうでしょうか。「あら、そうだった?自分でも気づかなかった。ちょっと考え事をしいていたから」といった答えが返ってくるかもしれません。

直接聞くことが難しい場合は、先輩に「お疲れさま」の一言を添えて、お茶を淹れる、といった行動で確かめてみるのも良いと思います。いつもと変わらない笑顔で「ありがとう」と返してくれて、嫌われたと感じていたのは思い過ごしだった、と気づけるかもしれません。

推論の材料となる証拠を集めてみた結果、本当に相手の機嫌を損ね、嫌われていた、ということが明らかになる場合もあるでしょう。そのときにはこう考えるようにしてください。「問題がはっきりした分、前進できた。次はこの問題にどう対処するかを考えよう」

4.グレーゾン技法(「全か無か思考」の修正法)

「全か無か思考」とは、YESかNOか、善か悪か、敵か味方かなど、極端な判断をしてしまう、推論の誤りのことです。

たとえば、入社以来、順風満帆で来ていたビジネスマンが、人事異動で苦手な仕事を担当するゆになり、失敗が続いて、叱責を受けることも多くなったとします。さらに、後輩が自分より重要な仕事を任されていると知り・・・・・。そんなときに、こう考えてしまう。「俺はもうダメだ。これまでの評価はすべて消し飛んでしまった。俺のような役立たずは、会社にいない方が良いだろう」

第三者の目で見れば、彼が極端なことを考えているのは容易に分かると思います。しかし、感情が刺激されているときには、誰しもこうした考えにとらわれやすいものです。

現実的に考えれば、会社にとって彼は「いない方が良い役立たず」ではない(中略)一方で、何の失点もなかったこれまでに比べれば、「彼にも苦手なことはあるのだな」という程度に評価は下がったかもしれません。つまり、会社にとって、彼の評価は100点でも0点でもない、その中間にある、というのが妥当な見方だと思います。そして、それは彼だけではありません。(中略)グレーゾンの中のどのあたりか、といった考え方ができるようになると、極端に高揚したり、極端に落ち込んだりすることが少なくなり、生きるのが楽になるでしょう。

5.must→better技法(「すべき思考:の修正法)

「すべき思考」とは、「~すべきだ」「~しなければならない」といった言葉で表現される考え方に固執してしまう、推論の誤りのことです。

「やるべきことを途中で投げ出してはならない」→「やるべきことを途中で投げ出さない方が良い

「何事も完璧を目指すべきだ」→「何事も完璧を目指す方が良い

「すべき思考」で考えている内容は、多くの場合、正しいことなので、内容まで変える必要はありません。あくまでも、表現をゆるやかにするだけです。それを自分に言い聞かせるように繰り返し、また、その通りに実行してみることで、「すべき思考」に苦しめられることは減っていくと思います。

6.「もう一人の自分」技法(「過大評価と過小評価」の修正法)

「過大評価と過小評価」とは、自分の短所や失敗を実際よりも過大にとらえ、長所や成功を過小にとらえてしまう(あるいは他人の短所を過小評価し、長所を過大評価してしまう)、推論の誤りのことです。

自分とまったく同じ悩みを抱え、同じように落ち込んでいる大切な友人が、あなたの隣に座っていると想像してみてください。その友人に対して、あなたはどんな言葉をかけてあげたいですか?

習い事の先生から言われた言葉(「あなたはよく頑張っていますね。まだまだミスは多いし、未熟ではあるけれど、これからの成長が楽しみです」)をネガティブに受け止めすぎている例で言えば、こんなふうに慰めてあげたくなるかもしれません。

「あの先生は人を褒めるときに小言を挟むクセがあるけれど、『よく頑張っている』『これからの成長が楽しみ』とも言ってくれたんだよね。それなら、もっと喜んでいいいんじゃない?」

その言葉こそ、今あなたが求めている言葉であるはずです。自分がどんな風に褒めてほしいか、本当はどんなふうに慰めてほしいかは、自分自身がいちばんよく知っているものではないでしょうか。

◆中島美鈴『悩み・不安・怒りを小さくするレッスン「認知行動療法」入門』

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